いま、レンタルDVDの某T店で、旧作100円でDVDを借りることができるので、このところ時々T店からDVDを借りて映画を観ています。
その中で、心に残った、私が傑作!秀作!とおもった3作品をあげてみます。
まず、「太陽を盗んだ男」1979年長谷川和彦監督作品。 主演は沢田研二さんと菅原文太さんです

この作品は多くのひとから邦画史上に残る傑作といわれてきて、私は長年ずっと観なくてはとおもいながら現在に至ってしまいました。
ストーリーは、平凡な中学理科教師である城戸が、原子力発電所からプルトニウムを強奪し、自宅アパートで原子力爆弾を完成させ、日本政府に奇想天外な要求をつきつけ脅迫するというもの。城戸と対峙する山下警部を菅原文太さんが演じています。タイトルの「太陽」とは「原子力」のことなんです。
このストーリーを聞いただけでも、監督の勇気を感じます。原子力に関する発言にとてもメディアがナーバスになっていた90年代以降だったら、きっと企画書が通らなかったのではないでしょうか。いやこの時代でもきっと圧力もあったとおもいます。そんなセンセーショナルなストーリーを文太さん、ジュリーという大スターが演じているところがすごい。
あの原子力発電所での大事故が現実として起きた現在にこの映画を観ると、監督がメッセージとして伝えたかったことがひしひしとつたわってきます。監督は広島での被爆2世だそうです。この作品で一番こわいのは、この、核をつかったテロリズムといったことを実行する犯人が、おおがかりな国際テロリスト集団ではなく、ごく一般市民である中学教師であるところです。ま、あんな美しい中学教師はそういないでしょうけど。高度な頭脳はあっても、幼稚な精神のひとが「核」をあつかうことになるということがどんなに恐ろしいことかとおもいました。
それは、この今の世界で、それほど荒唐無稽なはなしでもないってこともコワいです。
そしてまた、この作品の大きな魅力のひとつは、沢田研二さんと菅原文太さんの美貌です。ジュリーはドキッとするほどきれいだし、文太さんはほんとにかっこいいです。文太さんは、この時点での年齢は50代はじめか40代のおわりでしょうか。今の俳優さんで、この年代でこんなにかっこよく、ぶれない確固たる芯のようなものが感じられるひとって、おもいつきません。
この映画は1970年代~80年代の映画製作陣の根性やサービス精神、破天荒が全開です。こんな場所の公道(例えば霞ヶ関とか)で、こんなカーチェイスよく撮れたなって見ごたえのあるシーンがたくさんあります。また、文太さん演じる山下警部がジュリーを追って、地上10数メーターはあろうヘリから飛び降りたり、至近距離から銃で撃たれたりしても、また立ち上がり、ジュリーに立ち向かうという姿が、全盛期のジャッキー・チェンなみに不死身ですごいです
ジュリー演じる城戸は、東京都心で原子爆弾を爆発させるという計画にむけて、プルトニウムを扱う過程で、自分もどんどん被爆して、口の中が血だらけになってきたり、髪の毛がバサバサ抜けていったりと、死にむかっていくようすも「核」のおそろしさを示しています。
いろんなとこからのクレームや圧力を考えると、今、テレビ放映なんてぜったいにできそうにない映画です。でも、監督はこの映画で、「核」の恐ろしさに関して麻痺してしまってはぜったいにいけないって表現しているような気がしました。この映画を撮ってから30年たった今、痛切に感じています。
2作品目は2008年の韓国映画 ナ ホンジン監督の「チェイサー」です。

手に汗にぎるクライムムービーで、女性を監禁し、惨殺するという殺人鬼と、彼を追う元刑事のまさに、チェイシングのストーリー。この映画、ストーリーのかなり早い段階で、犯人が逮捕され、自白するという展開で、「えっ、こんなはやく自白までして、もうおわっちゃうの?」なんておもってたら、ここからストーリーは綿密に練られて、私が想像もしない展開を繰り返していきます。ほんとうに脚本も書いた監督の才能に脱帽です。
しかし、実に怖い映画でもあります。ヒロインは生き延びようとがんばったのに、すくわれないんです。映画を観終わって、「怖いけど、これは映画だから。」っておもってたら、最近韓国で、被害女性が警察に救いを求めたのにもかかわらず、不手際で女性は翌日までに惨殺されてしまったという事件のニュースを見て、震え上がりました。
とにかく、ナ ホンジン監督、評判は見ていましたが、やっぱりすごい。
そして、3作品目は1999年 是枝裕和監督作品「ワンダフルライフ」です。

こちらは亡くなったばかりのひとたちが立ち寄る、この世と天国の中継点のような世界のストーリー。1週間かけて、亡くなったひとりひとりのために、それぞれの人生で一番、思い出深いシーンの再現フィルムをつくるスタッフがその世界にはいます。完成した映像を観て、死者たちは皆、人生で一番思い出深いその時の気持ちにつつまれて、天国に召されます。
亡くなったばかりのその世界にきたひとたちは、スタッフからインタビューを受けて、どのシーンをどんなふうにつくっていくか、打ち合わせをします。こども時代の楽しかった時のこと、飛行機を操縦したときに見た、空の上の雲の中にいたときの幸福感、なかには、穏やかに微笑んで多くを語らないおばあさんもいたり。そのインタビューを受けるひとたちは、俳優さんといっしょに一般のひとたちも混ざり、自分のことを自分の言葉で語ります。もう10年以上前に撮られた映画なので、今はもう亡くなった方たちも出演していて、由利徹さんが、あの名調子で自分のことを語るシーンにはなごみました。
映像スタッフの一員である主人公をまだ20代前半のARATAさんが演じています。たぶん、俳優デビュー作だとおもいます。このARATAさんが浮世ばなれした美しさでした。まだ、20歳そこそこの男の子は顔もまだ、発展途上であることが多いですが、ARATAさんは完成されていましたね。
この映画を観たら、だれしも、「私なら、自分の人生のなかで、どのシーンを選ぶだろう」と考えるとおもいます。
就寝前にこのDVDを観終えて、寝ながら考えてみました。そうしたら、家族がみんなそろって、今はもういない愛犬もいっしょだった10年ちかく前の善福寺公園での桜満開の日のお花見会をおもいだしました。みんなでお弁当をひろげて、ボートにも乗ったな。とっても幸せな時間だったなって。あんな幸せな時間があっただけでも、生まれてきてよかった。
そんなことをおもわせてくれた映画です。その夜は、なんだかしあわせな気持ちのまま眠ることができました。